開かない扉


「う・・・ふぁ~~?」

千代が目をあけると、ナオが白衣に着替えて部屋を出るところだった。


「あ、寝坊したぁ!」


「おはよう。あっ、もっとゆっくりしてていいよ。」


「でも・・・」


「2人同じ部屋からいっしょに降りていく?僕はかまわないけど・・・」


「はっ・・・いえ、きちんと身だしなみしたいですっ!」


「あははは・・・。じゃ、先にいってゼアにつつかれてるよ。」


「はいっ。うふふ」



千代はナオの笑顔を見て、とてもうれしくなった。

((よかった。瞳の色も元通りになってる。))


そして、あわててナオのベッドを直して、自分の部屋で身支度をして、鏡をのぞいた途端、千代は少し震えた。

「私の目が・・・どうして・・・赤いの。
瞳が赤い・・・なぜ?」


その驚きを見た直後、外がとても騒がしいことに気がついた。


「大変だ!大トカゲが10頭も町につっこんでくる!」

「ありゃ、トカゲなんてもんじゃねぇ、怪獣だ。みんな、とにかく逃げるんだ!」



千代が外に出ると、ナオがトカゲが来ると思われる通りに出て立っている。


「先生、早く逃げて!」


「僕が時間を稼ぐから、千代ちゃんはみんなを連れて逃げるんだ。」


千代はナオの言葉をあえて聞かなかった。
心の底からつきあげてくるような、勇気と自信が千代を大トカゲの正面へと立たせていたのだ。


「千代!なぜ・・・逃げないんだ。」

ナオの声も届いていないように、千代の赤い瞳が冷たく燃えているようだった。


「千代・・・何か策があるんだね。いいよ、守るのは僕の役目だ。」