目の前にナオがくすっと笑いながら立っていた。


「先生・・・いっぱいご心配おかけしてすみません。・・・はっ?」


千代は自分の目をこすった。
ナオの深い藍色の瞳が赤くなっている。

((寝不足?違う。瞳の色が明らかに前と違う。どうして))


診療所の中に入ってから、もう一度確認してみる。
真正面から見れないけれど、藍色ではないのはわかる。


「先生、目をどうかされたんです・・?」といいかけて、ナオの腕をつかもうとしたときだった。

ナオはさっと、千代の手をすりぬけ、距離をとった。


「先生・・・?」


「あ、久しぶりに、いざ直接会ってみると、はずかしいもんだね。あはは・・・」



その後、ゼアやエルロたちもやってきて、診療所はもとのにぎわいがもどってきた。


ナオも夜まではあいかわらず仕事に追われているらしく、結局、ゆっくり話をしようとするにはいつもの時間となってしまうようだ。


しかし、今日は昨日までと違って、本人を前にして話をすることができる。
何から話せばいいものやら。

それと、契約のことはどうやってきりだせばいいのか・・・。



ナオが夜に自分を呼んでくれるものだと思っていた千代だったが、待っていてもナオが来ないので、勇気を出してナオの寝室へ行った。



カチャ・・・



「えっ・・・どうしたの。千代ちゃん。」


「どうしたのって・・・こっちのセリフです。いろいろ話さなきゃいけないことあるし、それに・・・契約のこととか・・・」



「あ、今日は疲れてるだろ。明日また・・・ゆっくりと・・さ・・・」



千代はいつ呼んでくれるのかと、ドキドキしながら待っていたこともあって、ナオの態度に少し腹立たしさを感じて、思わずナオの手をつかんだ。


ズキン!ボォォォォ・・・・・


ナオの手にふれた千代はいきなり、胸の痛みとカァ~~~と全身が熱く発熱して、うめいた。