「契約すれば、やはり治るんだね。」


「千代ちゃんが戻り次第、正直にいいましょう。ね、先生。」


「それは・・・・・くそっ、こんな呪縛なんてどうしてあるんだ?
神様もお告げでさえ、僕の前に出てきやしない。」


このとき、ナオが大きな不安を抱え込んでいることなど、千代は知る由もなく、基本的な魔法のおさらいをしていた。




「さ、そろそろ仕上げ段階だ。とにかく、まず魔法はイメージを描く。
これにつきるからな。」


「はい!」


((俺の情報網によると、贄はかなり衰弱しているようだな。
贄の呪縛・・・恐ろしい。いや、贄のようなものが存在してるということがまず間違いなんだがな。
ほんとに神ってやつは・・・わがままでどうしようもない。))





千代は、ルイゼの要求どおりの魔法をこなせるようになっていた。
ルイゼも1カ月間の千代の努力には驚いていた。

そして、約束通りに千代をナオのいる診療所へと送り届ける準備をしていると、千代がルイゼの愛用のカバンからはみ出している紙切れを見つけた。


「これって何?呪文が書いてあるのね。えっと・・・なになに・・・この世界はあと1年で消滅する。神は創造するものではなく、破壊するもの。
わがしもべたちはそろそろ動きだす。時間と空間も破壊。
すべてのものは逃がさぬ。
すべて消えゆかねば、わが心の安定などなし。
憎らしや、安定目指す者ども。


偽りと称されたわが心の子らよ。ひたすらな願いと心の絆がひとつとなりて、わが半身を食らい尽くせよ。
我が導く滅びの世界は我の未熟さ。消しきれず、創造できず、道標も見えず。

偽りの子らよ、扉を開けよ。

ディンド・・・・・・・・・・?わからない。いちばん重要っぽい呪文部分が読むことができないわ。」



ルイゼは口をあんぐりあけたまま、千代を見つめていた。


「内容が読めたのか・・・。封印したのは破壊神じゃない。神そのものだ。
それに未熟って・・・これは神の日記なのか?
破壊神浄化の呪文というのは・・・自分自身を崩壊させる呪文だというのか?
わからん、これだけじゃわからないじゃないかぁ!」