ナオはゼアには隠し事できないことはわかっていた。

しかし、自分で口にするのはずっと避けてきたことがあった。

それは自分がこの世界で与えられた運命というものについてだ。



「この世界は例の神様が急遽つくった、かりそめの世界だ。それはこの前話したよね。」

「ええ。それで・・・みんなが倒れて眠っていたのにもかかわらず、先生だけが起きて千代にとりついた神様とお話してたのはなぜか・・・?だわよね。

私たちのまとめ役だから・・・。まとめ役というのはほんとの任務じゃないんでしょ?」


「ゼアはするどいな。じゃ、先に僕と約束してくれないかな。これから話すことは千代ちゃんに絶対言わないと。」

「いいけど。内容はいいことじゃないんでしょう。約束しきれるかしら。」

「してくれないと、話せないし、君を倒さなくてはならなくなる。」



「まぁ、押し倒してくれるんだったらうれしいけどねぇ・・・うふふ。
あ、冗談言ってる場合じゃないわね。わかったわ、千代ちゃんに秘密ね。」


「じつはさ、僕はこの世界で死んだ人間なんだよ。扉をあけられなくて、この世界に落ちてきて、そのまま死んだ。
正確にいうと、元の世界で死にかけていたんだ。
ばかな売れっ子ホストがちょっと天狗になって、恨みをかって、ナイフで刺された。
そして、この世界へ・・・そしてすぐに死んだ。」


ゼアは信じられないという顔で、声も出せないでいた。


「死んだ人間がどうして、医者になってるのかって思うだろ?
ラッキーなことに、僕には死んでからの資格というものが設定されてたらしいんだ。」


「死んでからの資格?そんな資格きいたことないわよ。」


「僕も初めて聞いた。生きていたらの3年分の人生を引き換えにして、非常時の生贄として生きる資格だ。

だから、リリルには大人になったと思われたようなんだが、3年消えてるんだから、老けてるのは当然なんだ。

そして、そういう贄として生きる僕は回復魔法を使うことを許可されている。
あと、救世主に危険が及んだときには、1度だけ自分を犠牲にすることによって救世主を守ることができる。」