((う・・くくく・・・うう・・・))


動こうとしても、男の腕から逃れられずにもがいていた。

抱きすくめられて、呪文も唱えられない・・・。


「ふぅ~~~ん。気は強そうだが、よく見れば、この世界にはめずらしい若くてかわいい女だな。俺は、ルイゼ、もともとから魔法使い。よろしく・・・」


ルイゼは千代の顔をのぞきこむと、そのまま千代の唇に口づけした。


「うぐ・・・・・うっ・・・う・・・」


抵抗もできずに、合わせた唇にルイゼの舌の感触を感じかけたときだった。


「その子から離れろ!さもないと、書庫は使えないようにしてやる!」


((先生! 助けにきてくれた・・・!))

「うぐ、うう・・・うぁっ!」


「贄が言うなら仕方ないか・・・だが・・・ちょっと彼女はこのまましばらく借りとくよ。
あ、手荒なマネはしないから安心して待っててくれ。
用事が済んだら、返してやるから。じゃ、またな。」


シュッ!!!


「おぃ!どこへ行ったんだ?千代ちゃん! 千代っ!!!くっ」


ナオは床に跪いて、必死に自分に言い聞かせた。

((冷静になって考えるんだ。どこかに手がかりがある。あるはずだ。

でも・・・あいつは・・・贄って・・・どうしてそれを・・・))


ナオは床の隅に千代のものと思われる髪の毛を見つけた。


「よし、これなら捜せる!」


ナオは診療所にもどると、すぐに旅の支度を始めた。


ゼアはそんなナオに診療所はどうするのか、詰め寄った。


「心配ない。隣町の医者がしばらくきてくれることになってる!

ゼア、頼むよ。今回だけはどうしても出かけなきゃいけないんだ。」


「じゃあ、言って。隠し事してるでしょ。全部話してからじゃないと、出さないから!」