その頃千代は、魔法書のある石造りの家の入口を入ろうとしたところで、ナイフを突き付けられていた。

「何者だ?ここをいつから知っている?」

声の主は黒いコートとマフラーとサングラス姿で風貌がわからないようにしていた。

声からして男性だと思われるのだが・・・。


千代は怖がっているふりをしながら、ナイフの持ち手から炎を吹きあがらせた。

男は熱さと炎の勢いにナイフを床に落とした。


千代はすかさず、風魔法を使って、炎を男のコートやマフラーに燃え移らせた。

炎は千代の予想よりも派手に燃え上がり、男のコートとマフラー以外にも、魔法書の本棚へと炎が飛び火した。


「あっ、しまった!書庫が。」



すると、男はコートとマフラーを脱ぎ捨て、書庫を霧で包んだ。

「バカ!ここで炎の魔法を使うやつがあるか!」


男の怒鳴り声がして、燃えたはずのものがすべて、消火されている。


「でも・・・魔法書は魔法書なんだから燃えないはず・・・」


千代は霧で見えない相手に向かって、そうつぶやいた。


すると突然、目の前にナオと同じ深い藍色がかった瞳の青年が現れ、千代の両肩をつかんだ。


「きゃあ!・・・」


「誰がそんなことをいった?魔法書が魔法書の威力を発揮するときは、回復魔法を主体として生きてる魔法使いがいっしょにいなければ、発揮しないんだ。」


「うそよ。だって、前にきたときには魔法書が私自身に魔法書だから、燃えないって頭の中に話してきたんだから!」



「魔法書が・・・?そのときって、ここには他に誰かいなかったか?」


「いたわ。ナオ先生が・・・ナオ先生だって書庫が自衛してるっていってたわ。」


「そのナオ先生って回復魔法使わないか?」


「もちろん使うわよ。お医者様だもの。」


「そっか・・・あははは・・・ははは。そうか・・・あはは」


男は千代の肩から背中に手をまわし、抱きしめて大笑いした。