開かない扉

「ご、ごごごめんなさい。先生と対等っぽくしゃべってたから、つい。」


「もう、いいよ。俺から見れば、あんたの方が妹に見えるし、見た目に文句いってもしょうがない。」


「ほんとにごめんなさい。」


千代がエルロに謝っていると、ゼアが千代の食事を運んできた。


「お腹すいたでしょ。夕飯よ、どうぞ。お口にあうかしら？」


「ぶっ！」


「えっ？まずいの？どうしようかしらぁ・・・」


「いえ、ち、ちがいます。看護師さんがお話してるところをはじめて見たので、えっと・・・その・・・」


「おねえ系の言葉に、おいしい料理ときてびっくりしたんでしょ？
彼はゼア。元の世界と同じく優秀な看護師なのさ。」


千代はニッコリとピンクのエプロン姿でナオの横に立っているゼアを見ながら、目をぱちくりした。

「先生はそういうご趣味なのですか・・・？」


「いや、僕はべつに・・・普通に男やってるつもりなんだけど・・・見えない？」


「私はこの世界で、ナオ先生に会ってここで働くんだっ！って確信しましたわ。
この方のお手伝いをせねばって。」


「おぃ、ゼア・・・そういう発言はさぁ・・・」


ナオは千代の耳につぶやいた。


「（絶対、千代ちゃんの思ってる趣味はないから。信じて。）

ま、人間的にはゼアもエルロもいいやつだからさ、これからよろしくね。」


「これからって・・・先生・・・？」


「千代ちゃんが、この世界に慣れてやりたいことが見つかるまで、ここで面倒みることにした。
だから、ゼア、明日からさ・・・・」


「はい、看護師見習いさせればいいのでしょ？ほんとに先生ったら、面倒見いいんだからん。うふっ」


千代は突然、紹介された２人に戸惑いながらも、心のどこかで安堵していた。

知らない土地で、悪い人たちに捕えられたかもしれない状況だってあったはず。

なのに、今、自分は笑って話をしているんだもの。と自分に言い聞かせた。