千代は周りの騒がしさに目を覚ました。

目の前の、浅黒い肌のいかつい男が自分に唇を寄せてくる行動に思わず、顔を手でふさいで勢いよく炎を噴き出した。

「きゃぁーーーー!!!」

ボワッ~~~~~~~~~~~~~「うぎゃぁーーーーーー!」


千代は恐怖のあまり、エルロに向かって人差し指を向けた。

「それ以上魔法を使っちゃダメだ! 千代ちゃん!!」

ナオにそう言われて、千代ははっと我にかえった。

チリチリの髪の毛を逆立てているエルロの顔を恐る恐る見た。


「暴行魔?」


「誰が暴行魔じゃっ!」


「いやっ、来ないで、チカン!」


「だから違うっていってるだろうがぁーーー!」


ナオは2人の間に割って入ると、千代に説明をした。

「あ、びっくりさせてごめんね。こいつ、ふざけてただけなんだ。
本気で襲おうと思ってたわけじゃないから。僕がずっとここに居てたし。」


「えっ、じゃ、この人は先生の友達?」


「そういうこと。こいつはエルロっていうんだ。
この世界はね、君のような若い女性は少なめでね。
めずらしいのと、遊びゴコロでちょっとね・・・度が過ぎたようでさ。
それにしても、すごかったね、今の炎は・・・。」


「えぇ~・・・私つい・・・。やけど大丈夫ですか?」


「うん、ぜんぜん大丈夫。俺けっこう頑丈にできてるし、ちょっとばかしのやけどはナオが治療してくれるから。」


「よかった。エルロさんと先生は仲がいいんですね。同じくらいの年なんですか?」


「はっ?」


エルロとナオは顔を見合わせると、エルロはすねた表情を浮かべ、ナオはゲラゲラ笑いだした。

千代はキョトンとしている。

「そりゃないよ。千代ちゃん。こいつは千代ちゃんより1つ年下だよ。」

「え、ええぇーーーーーーーー!!!」

「いいよ、どうせ俺は老け顔だよ。」