ただ、キミが好き

窓に寄り、息を整える。

顔を上げ、歩き出そうとして、わたしは縫い付けられたように動けなくなった。

窓ガラスに手をあてる。

コの字型に建つ隣の校舎は、こちらとは対象的な造りをしていて、

中庭を挟み、廊下が向かい合わせになっている。

「………蓮、くん」

足早に歩く蓮くんの姿は、窓ガラス越しにはっきりと見えた。

蓮くんが立ち止まり、後ろを着いてくる二人の男子生徒に、指示を与えるように教室を指差す。

手に持ったバインダーを開き、なにかを書き込むと、眼鏡を押し上げ、再び歩きだした。

数歩、歩いて

彼は、何かにきづいたように、こちらに顔を向けた。

目が、合う。

どきんと胸が鳴った。

蓮くんは立ち止まり、逆光に目を細めてわたしを見た。

それから、ふっと優しく笑うと直ぐに顔を背け、また後ろの二人と話しながら立ち去って行った。

一瞬の出来事なのに。

胸が苦しくて、涙が零れた。