ただ、キミが好き

「俺が気に入らないんだよっ!!」

投げ付けた鞄が床に当たって、がつんと鈍い音を立てる。

「なんで浅倉なんだよ! あいつはダメだ! わかってるだろ? あいつが見てるのはあんたじゃない! あの幼なじみの女だ! 真由は身代わりでしかないんだよっ!!」

「わかってるわよ! わかってるから怒鳴らないで!」

顔を伏せ、耳を塞ぐ真由の肩が、小刻みに震えているのに気付いて

俺は言葉を飲み込み口を閉じた。

彼女を脅えさせた自分の短気さを悔やみながら、大きく息をつき、視線を落とす。

「…俺は」

叫んだせいか声がかすれて、喉の奥がひりひりした。

「真由に幸せになってほしいだけなんだ」