言ってしまえば、妻子、恋人などがいる者たちも
死なない保証がない戦場に行くべきは、自分のように“誰にも迷惑がかからない奴”が相応しい
クロスには守るべき相手も、失いたくないモノもなかった
ただ行くのは自分は騎士という“仕事”についたから
――そこにどうして誇りが持てよう
クロスが剣を振るうのは相手が自分を殺そうとするからだ
何も持っていない自分でも、どうやら命は惜しいらしい
誇りはなくとも、生きたい自分は殺戮兵器ともなれる
死にたくない、ならば誰よりも強く
その循環が合っていたのか、彼は剣を振るう度に明らかな変化があった
第二部隊長
隊長という名称は飾りではなく、二十一の若さで昇格した彼に誰も何も言わなかったのはひとえにこの強さと
先のように志気をあげる威勢


