げほげほと体は痛みを訴えるがそれを気にしてはられなかった
――その存在はあまりにも強敵
勝手に気持ちを荒ましているのはクロスだけだが、決定的だった
弱い意志しかない自身にこの誇り高い存在は
上体をあげても、次は構えるような体制は取らない
自分の真横には弾かれた剣が地にあった
――まるでそれは、“己”の墓標のよう
印籠を渡すのはきっとあの男なんだろうと思う
見上げた姿
見ればあちらもどことなく息を乱していた
叩き疲れでもしたか
少しの間だけ、印籠を渡す男が止まる
「何なんだ、騎士って……」
その猶予にクロスは問いた
疑問だったことに
この男ならば知っているであろう答えを
失いたくないものがないクロスが知りたがった事実
誇りなき者は、その誉れある者に言葉を投げた


