「お前、それが全力かよ。違うだろ?」
「っ、ふざけやがって……!」
挑発的な言葉に相応しい笑みがとさかを撫でる
売り言葉を買いそうになるが、反撃でもすればこちらがやられると知っているからこそクロスは防御に徹した
剣を交えているせいで男との距離は近い
だから何度も見てしまう
失いたくないものがある男の瞳、を
強かった
それが印象的
濁りに濁って、挫けそうな自分とは相反する目
これが、騎士――強い信念を持つ目なのかと感じる
勇ましかった
果敢だった
羨ましかった
「何なんだ、よ……。騎士って……」
剣が、弾かれた
剣ごとクロスの意志が飛んでいくよう
手に何も持っていない体を男は剣同様に飛ばす
蹴飛ばした
威力は最高、死体の山にクロスも横たわる


