気づかないようにした、見てみぬふりをした
自分がこんなにも血(罪)に濡れていることに
なのに、全てはあの男のせいで
ぎち、と歯を噛む
「どうして……っ」
クロスの呟きに、仲間を逃がした男が視線を戻した
クロスが話したのが意外だったか、笑みは消えている
ただ未だに光ある目が、やけに目に入り
「どうして他人を救える……!戦争なんだぞ、これは。殺すのは相手だけじゃなく、味方だって例外じゃない、のに、っ。
自分だけで手一杯のはずだ。そうじゃなきゃ、地べたを這う惨めで苦しい末路しかないってのに。己じゃなく、他人に目を向けたら最後。
目の前の剣に刺されるんだぞ!」
怖くないのか
まとめれば、そうだった
刺される前に刺すのは怖いから
殺される前に殺すのは恐いから
それらを省みずに人を助ける男は一度だけ思考し
「……他人の前に仲間――俺にとってはなくしたくないものだから助けるんだ。お前にもそういう奴一人二人いるだろう?」
やはり、この男と自分は決定的に違うと感じた


