青胆がある痛々しい手で、倒れる兵士を立たせる光景
――また、だ
どうして人を助けられるのかが不思議でならない
その兵士が男の知人になのかとそんな屁理屈まで考えてしまう
だってそうだろう
戦争時、彼のような奴は一度として見たことがない
助ける暇があるならば斬れ
他人の命を見る余裕がないこの生死の狭間で、どうしてあんなにも
“人間らしく”いられるのか
戦争は人を獣に変える
殺すことに罪という意味を与えない種族に成り下がった
人間なんか戻れない
戻ったら最後――
「っ、くそ、が……」
このクロスのように赤く染まった己を見て絶望してしまうから
罪が帰ってきてしまった
正当防衛の名のもとに誰かを殺しても、斬った感触は手先に残っている


