この殺しに誇りを持て、人を一人斬ることで我が国が栄えるのだから
――そう、思えば良かった話だ
騎士としての誇りがないクロスには正直、この殺しが栄誉あることだとは思えない
失いたくないものがない自分には守るべき人も目標も信念もなく、ただ簡単な理由で前に進む
感情が死にそうになる
どうして自分はこうも“死ににくい”のか
隣の仲間がバタバタと倒れていくのに対し、一番に“死んでも構わない自分”が殺しをしていたこの皮肉
敵陣の真ん中に一人いようが、周りを一掃した
相手の返り血だけで銀の軽装が赤くなっていく最中――
「っ――!」
その人物は現れた


