前にいる敵も殺さなければならないのは当然だが
倒れる味方も“見殺し”にしなければ、自分が生きられない
この一秒先に死が待つ場で、どうして他人が救えようか
自分だけが優先となってしまうこの悲しい場面
己の命を守るために振るう刃がいかに残酷で、もっともらしい理由か
続けられた殺人
人を斬る感触に慣れすらも覚えていく
敵の馬を斬ることと、人を斬ることの区別――罪の重ささえも同じに感じてしまう
落馬し、足を骨折して泣きむせぶ奴に刃を
刃向かい、返り討ちにあった奴にとどめを
命乞いをし、土下座をしてきた奴に無慈悲を
斬って、斬って斬って斬って斬って斬って――!
「っ、あ、あああ!」
叫びながら斬ったのは何のためだったか
足場が死体置き場となりつつあったクロスは、死体の丘でも作る勢いで剣を振るっていた
馬は死に、落馬しながらも体制を立て直し、土で擦った頬の痛みを無視しながら相手を殺す


