「あくまでも、人を救うための力だと、言うのか」

 力を持った人間は、いつか必ずそれに溺れる。それを律するために側近という存在がある。それでも、制御がきかなくなる事はしばしばだ。

「君は、やっぱり僕たち人間とは違う」

 手にした権力は全て他者のために使われている。増大する力を、冷静に眺めていられるなんてあり得ない。

 人間の寿命でならそれは理解出来る。けれど、君は不死だ。変わらぬまま十年、その権力を振りかざすことがなかった。

「育った環境が今の君を形成したんだろうね」

 そう言い切ってしまえる訳ではないけど、憎しみで満たされていれば真逆の道に進んでいた事は自明(じめい)だ。

 勝手に造られ、自由もなく閉じ込められ、学びを強制され。それでも、彼から憎しみは感じられない。

 何もかもを割り切って生きていた。君にとっての雑音(・・)を排除したことで、希望や輝きといったものを見いだした。