「じゃあセンパイは恩人なんだね?」
揺れる車内。
無事に仕事を抜けてきたまりあを隣に乗せ、伊藤先輩の家へ向かっていた。
そう……電車通勤の俺はわざわざ夕方一度車を取りに帰ってたりして。
まりあの小さな手には茶色い封筒が握り締められている。
今日の給料なんだとか。
きっと俺が想像出来ない額が入っているんだろう。
あの……親父さんの為に。
「先輩が恩人……ねぇ」
「だって海人は一人じゃお店に来なかったでしょ?」
そりゃ確かに。
「驚くなよ?俺とは全然違うタイプだし」
「まりあ嫌われる??」
「いや、向こうから連れて来いって言ってたし大丈夫だろ?心配するな」
本人も気が付いてないかもしれないけど……まりあはきっと対人恐怖症だと思う。
極度に人に嫌われたりする事に怯えるのは、愛美から聞いた中学校での出来事が原因なんだろうか??
はっきり言ってレイプみたいなもんだもんな。
ったく。
どうしてまりあだけこんな目に……。
そう思うのは傲慢ですか?



