汚れた街の汚れなき天使




「何か飲む??」



「じゃあアイスコーヒー」



そう告げると部屋に付けられた電話でなにやらフロントの人と会話をする。


程なくして黒服がドアを叩き、届けられたのはキレイなガラスのコップに入れられたコーヒーと紅茶。



まりあが受け取り俺に差し出した。



「なんか……これじゃ喫茶店だな」



「前に働いてた系列のお店は自分で紙コップに注ぎに行くんだよ。ここのお店は親切なの」



「俺は……ここ以外知らないからなぁ。」




知らない世界だけど、まりあの事を知る為にもっと知りたい。


なんて……いつからこんな独占欲が強くなったんだか。そう苦笑いをしていると




「でも海人が一番優しくてカッコいいよ」




俺のちょっと長めに伸びた髪を弄びながらまりあが言った。




「海人の髪きれいだよねー。まりあもこの色にしたいな」



飾り気のない真っ直ぐな黒髪のまりあ。



それとは対照的な茶髪な俺の頭。地毛から若干明るいせいでちょっと色を抜くだけで一気に変わりすぎるのが悩みの種なんだけど。




「じゃあ、いつかお揃いにしような」




まりあならどんな髪型でも髪色でもいいんだけど、すごくすごく嬉しそうに頷くから……たくさんの約束をしたくなる。



たくさん二人で約束して、たくさん叶えて、たくさん築いていきたいんだ。




幸せの降る、未来を……。