汚れた街の汚れなき天使




「いらっしゃいませ♪」




俺の事はもちろんお店には内緒なので……「ご予約の波多野様」として君と手を取り個室の中へ。


前の客が使っていただろうボディソープの香りが鼻に付くけど、自分でも不思議なほど冷静だった。


たぶん。


今までの俺だったらその見知らぬ誰かに嫉妬しただろう。むしろ、その方が普通な気がする。




性行為ぎりぎりの事をここでまりあがしているのは本人の意志じゃない。



だから……許せるのかもしれない。




「なんか、久しぶりだね♪海人に嫌われてなくて良かったよ~」


本当にほっとした様に、握った俺の手を部屋に入っても離さないまままりあは天使の笑顔で微笑んだ。



「嫌いになる訳ないだろ?っていうか毎日好きになりすぎて困ってる」



立ったままそっと抱き寄せるとそのまま体を預けてきた。



……ちょっと、痩せたか??



背中が前よりも薄くなった気がする。きっとまともに食ってないんだろう。




「ちゃんと食べてるか?」



そんな俺の問いに軽く首を振って


「海人ともう逢えないかもって思ったらごはん食べられなくなった」



その言葉が嬉しすぎる反面、彼氏としてちょっとだけ情けなかったりして……。