汚れた街の汚れなき天使




「くそっ!」



携帯を投げつける。


メールはエラー、電話は圏外。まりあは……軟禁でもされているのだろう。


まぁ、あの父親の事だ。仕事に出さないなんて事はありえないだろうから。



俺の取る手段は一つ。


また店に会いに行くだけだ。



……にしてもなぁ。



母親らしき人はいなかったし。


父親は乱暴してる割にまりあに対して異常な愛情を持っていた。



もちろん、あんな愛し方間違ってるんだけど。



どうしたら、キミを救えるのか。話せば分かるタイプじゃないだけに……なぁ。



結局ほとんど眠れないまま、俺は今日も会社へ向かう。



いつの間にか、いない事は分かってるのに新宿駅を降りてぐるっとキミのお店を回り会社に行くのが日課になってるし……。



だけど、看板に映るキミの姿を見るだけでも元気になれるんだ。



もちろん帰りもお店の前を通る。



こんな人には言えない下らない日課。



だけど……この行為があったから俺はキミを救えたんだ。だから後悔なんて少しもしてないよ?



たとえもう……キミに会えなかったとしても。