汚れた街の汚れなき天使



そういえば。


「こっちは見たのか??」


ひらひら振った親父さんの日記にキッチンにいたまりあが顔を上げて……。




「ん??」



……ガチャン!!



「あーまただぁ」



「あーまただな」



まりあが割ったお皿の数が今日も増えた。



「なんかねぇ、手が滑っちゃって」


そう言いながら一生懸命家事を覚えようと頑張る姿にまた惚れ直してしまう。

手を切らないように片付けてやりながらこの小さな体を構成してきたものを思うと……なぁ。



お店の近くのお弁当屋さんや蕎麦屋の出前。



朝は食べずに仕事へ行き、帰ればそのまま寝る。


一日一食で料理を作った事も作ってもらった事もほとんど無かったらしい。




もし、まりあの本当の母親がまりあを引き取りたいと言ったら……普通の生活を教えてやるべきなのに改めて気付く。



「はぁ……」



なんとかお皿を洗い終わったらしいまりあを膝の間に座らせると、再び日記を取り出して見せた。