―コンコン―
教えられた部屋は個人の部屋らしい。自分の部屋を持っているという事はかなり権威のある先生なんだろうか?
少し緊張しながらドアを開けた。
「失礼……します」
「どうぞ」
白衣を着た背の高い、年齢は50代前半ぐらいだろうか?眼鏡をかけ、間違いなく頭の切れそうな雰囲気。
「名前を聞いてね、すぐに浮かんだよ。事件の関係者だって……」
ニュースや新聞で大きく報道されたあの事件のせいで俺の名前は日本中に知れている。
風俗店に飛び込んだ勇敢な青年と称される事もあれば、風俗嬢と交際中の会社員だとあまりよろしくない肩書きで書かれる場合もあり。
社内では真面目にやってきただけに、会社の人間がどう受け取ったのかも気になる所ではある。
「関係者というか当事者というか……」
そう言って頭を掻くと、好意的な瞳で座るよう促され、簡単な応接セットまであるその部屋の豪華な椅子に遠慮しながら座った。
「これ……なんですけど」
束ねた領収書。
「はい、確かに彼は私の患者でした」
松永医師は懐かしむように語る。
「特定難病でした」



