辛そうな表情で過去を語らせて……だけど聞かなきゃ良かったとは思わない。
俺は、このある意味まっすぐで純粋すぎる海人の妹も、素直で世間知らずな海人の彼女も、とっくに気に入ってしまっていたから。
「お前なんて女じゃない。魅力を感じない。そう言われたアタシは……」
震える声で搾り出される過去。
可哀想に。
まりあを恨む事でしか、傷を癒せないなんて。
本当に悪いのはその達也ってつまんねー奴なんだけど、とは今は言わない方がいいだろう。
「内容は分かった。けどな?海人が目ぇ覚ますほうが今は先決だろ?顔合わせろとは言わないから一日のうち、あの娘が会う時間ももらえねーか?」
「…………。」
「たぶん、まりあじゃないとダメだ。」
冬の風が二人の頬を刺す。
沈黙がしばらく続き
「……わかりました。午前中はアタシ来ませんから」
それだけ言うと、愛美ちゃんは階段を下りていった。



