「離してください!!」
俺は屋上へ半ば強引に愛美ちゃんを連れ出していた。
「やめて下さいっ!お兄ちゃんに触らせたくない!」
じたばたと暴れる彼女をなんとか病院だろ?と静かにさせて。
「海人がやっと好きになったのがまりあだろ?いつまで奪うって……悪ぃ、俺には意味が分からないんだが」
「あの子だけはダメなの……」
うつむいて唇を噛むその表情はとてもただ兄を取られただけで怒っている様では無い。
なぁ海人?
俺にあんまり貸し作ると利子高いぜ?なんてな。
どうやらお人好しが伝染したらしい。
「らしくないな?愛美ちゃんとまりあは知り合い??」
黙ったまま10分が過ぎ……。
たぶん向こうは知らないと思うけど、そう前置きをしてぽつぽつと語り始めたその内容は……二人の気持ちを推し量るとただ切ないだけの話だった。



