『裕太!!』


裕太の母親が姿を見せた。


『ママー!!』


裕太は姿を見せた母親に抱き着いた。


『裕太、ごめんね。一人にしてごめんね』


裕太の母親は裕太に謝った。


『大丈夫だよ、お兄ちゃんが一緒に居てくれたから…ね、お兄ちゃん…あれ?』


裕太が振り返ると、青年の姿はどこにもなかった。


『誰もいないじゃない…。さあ、帰りましょう裕太』


裕太の母親はふと首を傾げ、そして裕太の手を引き歩きだした。


『う、うん…』


裕太は手を引かれながら、青年のいた場所をチラチラと気にするように見ていた。


そんな裕太のもういっぽうの手にはお守りが握りしめられていた。


そのお守りの中には…折りたたんだ写真が入っていた。


その写真の裏には“愛してる”という文字が書かれていた。


しかし、裕太がそのお守りの中身を知る事はこの先もないのだった。