チラッと彼らを見れば、彼が此方を見て呆れていた。

ついでに「バーカ」の、口パクつきで。


「手なんか出してねぇよ。 仕事を続ける以上、そういう関係にはならないことを条件にしてる」

「んじゃあ、生殺しやな?」


な、生殺し…ですか?


「はあ…。 一応、あいつの親子さんとの契約だしな。 やっぱり、きちんと責任は果たすべきだろうが」


その責任を放棄しようとしていたくせに。


「ただ、一年だ。 後一年で、俺は会社を辞めるんで、そこらへん宜しく」

「やっぱり、問題児じゃないですかぁ!」

「まあまあ」


頭を抱えた小波さんを落ち着かせている安藤さん。

そんな彼らを放置して、あたしは彼に手を引かれ会社を出た。

いいのかな、あのままにしてと、ちょっと心配を残しながら。

.