見つめ合うこと数秒。

予想外にも、彼はあたしを見つめ返してきた。

絶対逸らすと思っていたのに、こう見つめられてしまうと恥ずかしいじゃない!


「……ふぅ。 あのさ、あたしあんたのこと気になるんだよね」

「……気のせいだな」


「そうかとも思った」


否定しなかったのが意外に思えたのか、彼は僅かに目を見開いた。


「あたしも気のせいかもって。 ううん、気のせいにしなきゃいけないって思った。
最初の印象なんて最悪だったし、偉そうだし何を考えているか分かんないあんたなんて、誰が好きになるもんかって」


「散々な言われようだな」


クスッと、あたしの笑みがこぼれた。


近くでオロオロと様子を窺っていた陸君が、不安そうにあたしのスカートの裾を握った。


大丈夫だよ。と、頭を撫でてあげる。


「あたしだって、散々言われたじゃん。 バカとか鈍臭いとか、自分勝手とか」

「そのまんまだからな」

「そっくりそのまま返すよ」

「っ…お前な。 はあ…あれだけ面倒みてやったのにな」


その言葉に、コクンと頷いた。

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