あたしは、小波さんに向き合いハッキリと言った。


「あたしは、相馬さんじゃなきゃ嫌なんです!」


彼じゃなきゃ、同じ家で生活なんて今じゃ考えられないもの。

「そうですか。 困りましたねぇ。 相馬君は、もう……」

「ちょっとええかな?」


また、割り込もうとする安藤さん。

だけど先程までと違い、今度は真剣な表情であたしに尋ねてきた。


「君は、本当に相馬君に家政婦として帰って来てほしいんかな?」

「え……?」


質問の意図が分からず、あたしは首を傾げた。


「じゃなかったら、契約の話しなんて……」

「君さっき言うてたよね? 相馬君に会いに来たって。 それは、仕事上? それとも、個人的?」


仕事上? 個人的?

そう聞かれたら……


「……個人的に、です」


仕事とかじゃなく、もう一度ちゃんと話がしたい。

あんな形で終わりたくない。

もしも、家に帰って来てくれないとしても、何か繋がりがほしかった。


「ほんならまず、雪ちゃんと話をする前に相馬君と話すべきやね」

「……はあ。 彼に居場所は口止めされてますけど?」

「それでも、このままやと互いにわだかまりが残ることになると思う」


小波さんは、もう勝手にしろと手を振っていた。

あたしは、彼に会えるかもしれない期待に目を輝かせながら安藤さんを見つめる。


「ちゃんと話して、これからのこと決めんとね」


そう言った安藤さんは、どこか懐かしげに微笑んでいた。


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