彼の秘密を知った日から数日後、あたし達の関係には多少の変化があった。


一番の変化と言えば……


「由梨ちゃん! こんにちわ!」

「うん! 陸君、こんにちわ!」

彼の息子の陸君が、あたしの家に遊びに来るようになったのが一番の変化だ。

そうなる経路には、あの後の会話にあって。



『そうだ! 陸君、呼んでいいよ! あたし、子供好きだし!』


『は? なに言って……』


最初は躊躇った彼。

一応此処は彼にとっては職場になるから、遠慮もあったんだろうけど。


「由梨ちゃ〜ん、昨日ねお絵かきしたんだよぉ!」

「そうなんだ! 何を描いたの?」


あたしとしては、やっぱりパパとずっと離れ離れなのは陸君が可哀想で、彼にも陸君との時間を大切にしてほしいと思って説得した。


「んとねぇ、はい!」


陸君が初めて家に来た時は、彼の足にしがみついて、恐る恐るといった感じで部屋に入ってきた。

だけど、彼が背中を押すと、ちょっと躊躇いながら上目遣いで「は、はじめまして」って笑ってくれた。


照れ笑いを見せる陸君と、あの時の陸君の笑顔が重なって、胸がキュンとなる。


「今日、此処に来るのが決まった途端、急に描くってきかなくてな」

「……これ、あたし?」

「うん!」


陸君用に買っておいたオレンジジュース。

コップを両手で持って、キッチンからやってくる彼のもとへ走って行った。


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