「いつか、陸を連れて二人で暮らすつもりだ。 だから、今はそのための資金作りのために此処に世話になってる」


元々責任感が強い彼は、奥さんがいないのに、奥さんのおばあちゃんに陸君を預けていることが、本当は嫌なんだって。


だけど、今は誰かの手を借りないと男一人で子育てするのは難しいというのも分かっている。
だから、一刻も早く、そんな環境から抜け出すために、住み込み家政婦で資金集めしてたんだね。


おばあちゃんや、彼の話を聞いて凄いの一言だった。


自分勝手な奴だと思っていた彼にも、いろいろあって頑張ってたんだって。


たった一人で、二十歳から子供を育てるなんて……。


あたしには、多分出来ない。


そんな覚悟もてない。



「大変だなって、哀れんでんじゃねぇよ。 俺は一度も後悔はしたことねぇ。 陸は、唯一の俺の家族だ。 あいつのためなら、何も苦になんねぇんだよ」

「唯一の…家族?」


え、でも確か……。


「親は健在だけどな。 ただ、昔からそりがあわねぇ上に、二人とも好き勝手やってるような奴らで、互いに今どうしてるかも知らねぇよ」


「そうなんだ……」


駆け落ちのように二人で逃げ出した親元。

彼自身、幼少時代から苦労が耐えなかったと語る。


親に親らしいことをしてもらえず、愛された経験もないって。

なんか、知れば知るほど、胸が苦しくなった。


ふと視線を感じ顔を上げると、彼にジッと見つめられていた。

「だからな、お前は恵まれてんだよ。 お前は心配性の親御さん達をウザイなんて言うが、本当の親は子供が幾つになっても、心配で可愛くて仕方ないもんさ。 幸せになってほしいから、あれやこれやと世話をやきだかる」


「あ……」


彼と出会った時に言われた言葉が脳裏を過ぎった。