「すまないね。 暗い話をしてしまって」

新しいお茶をいれながら、おばあちゃんは陸君との思い出話を始めた。


けれどあたしの耳は、それを通過していく。


あたし……なにしてんだろ。

こんな秘密を知ってしまって、これからどんな顔をして奴に会えばいいだろう。



長い話しを何とか区切り、あたしは自分のマンションに帰って来た。


暗い部屋で、クッションを抱えぼんやりとする頭。


奴には奥さんがいて、息子さんもいた。

奥さんがいなくなって、一人で息子さんを育てているパパだった。


25歳にしては、やたら老け込んでるていうか大人すぎると思った理由は、そこからきてるものかもしれない。


あたしには、想像だに出来ない人生だった。


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