家を出る時の、お父さん達の潔さが、まさかこんなことが理由だったなんて思ってもみなかった。


『由梨、あっちに行っても頑張るんだぞ』


『由梨ちゃん、毎日電話してね?じゃなきゃママ寂しいわ』


遠く離れた大学へ行きたいと言い出してから毎日2人には泣かれた。

なのに上京する日にはあっさり笑顔で見送られ、何か怪しいとは思ってたんだ。


だけどさ……

あの笑顔の訳が、まさかこの"彼"だって誰が予想できる?


「……あのぉ、ちょっと確認しても良いですか?」


「どうぞ」


了解を経て、実家に電話をかけると数回のコールでお母さんが出た。


「お母さんっ!? あのさっ、今知らない男の人が…」

『あ、相馬さんに会ったのね!
彼イケメンでしょ? パパは若い男は心配だって言ってたけど、彼なら大丈夫よ! だってイケメンだもの!』


「……………」


お母さんのマシンガントークに、私は口を挟む隙がない。


てか、イケメンってだけで選ばれた彼が可哀想に感じてしまった。

それにお父さんの反対した理由が、もっとも私自身も気になったことだった。

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