栗色の長めの前髪から覗く切れ長な瞳と筋の通った高い鼻、美形というよりは野性的なワイルドさのある20代前半の男性は、薄い唇を開いた。


「こういったもんだ」


ぎこちない動きで彼から名刺を受け取ると、聞いたことない会社名に首を捻る。


「人材派遣会社ドリームパラダイス?」


「相馬璃兎、本日付けでお前の面倒をみることになってるから」


「へ? それって、どういう意味ですか?」


何だか、とっても怪しい。

人材派遣会社ってことは、人を何らかの目的で派遣するんだろうけど。


"ドリームパラダイス"という会社名が如何にも怪しくて、私は相馬璃兎(そうまりと)を睨んだ。


長く関わるのは駄目だ。

こんな変な人、さっさとお引き取り願おう。


「お前の親が、俺を雇ったんだよ。
一人娘が初めて一人暮らしをする上に、遠く離れた土地だから心配で仕方ないだとさ」


「はい?」


「だから、お前の親父から家政婦として雇われて来たの。
家事全般からお前の用心棒まで、いろんな意味で面倒みてやるんだ、有り難く思え」


ふんぞり返って威張る"家政婦"と言った彼を、唖然として見上げる。


"家政婦"とか"雇われた"とか、私の知らないうちに何事か起きていて、その発端は全てあの過保護な親らしい。


私は、大きく溜め息ついた。


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