「あのなぁ…。 嫌だ嫌いだで、何でも通ると思うな」
はあと呆れて出た溜め息に、あたしはウッと言葉を詰まらせた。
確かに、それは一理ある。
「覚える気がないやつに教える程、俺はお人好しじゃねぇから」
奴はそう言うと、1人でさっさと調理を進めてしまう。
隅に追いやられてしまったあたしは、奴の手際の良い調理裁きに釘付けになると同時に
なにしてんだろ……。
と、情けなくなった。
奴を派遣した親も、奴自身も見返したくて頑張ろうとしたのは、他でもないあたし自身なのに。
"嫌だ嫌いだが通ると思うな"
その言葉が、グサリと矢になって突き刺さっていた。
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