感心してると、奴は既に別の作業に取りかかっていた。
ハンバーグとサラダが今夜の夕食なので、きっとサラダを作ってるんだろうけど……
「……ほんと不器用だな、お前」
「……返す言葉もないです」
あんたが私をほっぽって、サラダ作ってるから悪いんじゃない!とは、口が裂けても言えない発言を呑み込んだ。
奴は、またしてもぶつ切りになっていた玉ねぎを見てから、私の背後に回った。
なになに?
「ほんとは、こんなやり方危ねぇからやらねぇけど、特別だ」
特別と言った奴は、私の背中にピタリと密着しているかと思えば硬直していた腕を掴み大きな右手で、私が持った包丁事包み込んだ。
はぁぁぁぁぁ!?
なんですか? この状態は?
「いいか、まずはこうして…んで、次にこうすれば……」
ザクザクと奴の動きが直接伝わってくる。
変な緊張感に襲われた。
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