「あーまじ眠い、今日もう帰らねぇ?」


 電話を終えた達也が発したのは、その一言だった。

 今の今まで楽しそうに話していたのは、どこのどいつだ。

 そういってやりたかった。

 謝罪などない。

 もう、諦めている。


「何?何か言いたいことあんの?」


 無言で見つめる私に、達也はだるそうに言ってくる。

 半眼なのは、眠いからか、うざいからか。


「ううん、別に。そうだね、帰ろう。私も疲れた」


 手から離れたスプーンが、カラン、と音を立て器に沈んだ。

 最後の最後まで、底に残されたチョコレートには、届かなかった。