私が古谷家へ上がるのは二度目。



一度目以上に緊張していて、足が地面を捉える感覚がない。



「気良、ほれ。」



勇将先輩が紅茶を出してくれた。



「あ、りがとうございます。」



紅茶が体にしみて、冷たい体が温かくなった。



「なぁ、気良覚えてる?」



勇将先輩が私に問い掛ける。



「何をすか?」



「俺達が初めて会ったときのこと。」



勇将先輩が懐かしむように目を細める。



私も、そっとあの時のことを思い出した。



「よく覚えてるっす。私が欠伸してて、勇将先輩にぶつかっちゃって。」



「せやな。…もうあの時出会ってから、一年近いねんな。」



勇将先輩は優しく微笑んだ。