古谷家はなんだか温かい雰囲気に包まれていた。



とても心地良い、そんな優しい何かで。



「ほら、部屋戻るで。」



「はいはい。」



勇将先輩が私の腕を掴んでずんずん階段を上がる。



でも、私には分かってるよ。



お母さんの本音を聞いて照れているんですよね?



私は勇将先輩の背中を見つめながら、そう思った。



「勇将先輩。」



「何や気良?」



振り返る勇将先輩に、私は少し微笑んで見せる。



「良かったっすね。」



私が言うと勇将先輩が小さな声で「うん」と喉を鳴らした。