苦しそうにコートを駆け回る日和の姿に見てられなくなる。



隣の龍太郎も、日和が滑ったり転んだりする度に飛び出しそうな衝動を抑えていた。



強気だけどだれよりも優しい龍太郎は日和の痛みを自分のことのように思っているのだろう。



「日和!立て!お前は勝ちたくないのか!?」



コートにうずくまる日和にまだまだと言わんばかりに怒鳴る芹澤さん。



雨で体力を削られているはずなのに日和はまた立ち上がった。



「…もう、いいよっ」




隣で、龍太郎が傘を握る手の力を強めるのが見えた。