男は、5枚の食パンと7つの目玉焼きと10切れのハムを平らげた。

「で。どちらさんですか?貴方は」

アイスミルクをがぶ飲みする男に、何度目かの問いをなげかける。

「なんだ、冷たいのな。あんなに甲斐甲斐しく世話してくれたのに」

(甲斐甲斐しく世話?)

「昨日拾った猫以外、思いつかないのですが…」

そういえば朝から見ないな…部屋の中に居ないって事はどこかから出て行ったのか…?
あんな怪我でどこか行ったのか…。


「だから俺がその猫だって。わっかんない坊主だな」

「自身は、坊主ではなく月夜(ツキヨ)という名があります。」

「ふーんツキヨね、俺は瑠紫(ルシ)。」

「ええと、ルシ。あなたが猫とは信じられないのですが。」

「信じるも信じないも、事実だって。ほら」

腕を出すルシ。
猫に巻いたのと同じ包帯。

「…同じ場所に同じように巻けば、それは証明の意味を為しません。」

「まー言われると思った。」

ため息を付いて目を瞑るルシ。

「あんまりアノ姿、俺、好きじゃ無いんだよな」

ブツブツ言うルシがみるみる縮んでいく。
自身の見ている前で、ルシは猫へと変化した。