普段の休日の昼過ぎの公園は、親子連れやカップルで賑わっている。

しかし、"影"切りの舞台となった今は、月影清掃によって準備が整えられていた。

すなわち、無人。

砂場には、誰かが置き忘れたスコップだけが寂しく転がっていた。

自身はベンチの上へと、ケーキの箱を置く。

「やぁ、君も"影切り"かな?」

声を掛けられ、ハッとそちらを見ると、爽やかな風(彼のオプションらしい…)が吹いていた。

「えーと?」

「あ、ごめんね。僕も"影切り"のバイトなんだけど、他の"影切り"見るの初めてで。

…それも君みたいな可愛いコだったから、思わず声、かけちゃったんだ。」

可愛いってのは良く解らないけど、自身も他の"影切り"に直接会うのは初めてかも。

しかも…。

「貴方…人間では無いですね」
自身でも何故判ったのか、言った瞬間は不思議だった。

「あ、あれ?気付いちゃった?」

…多分、匂い。

それから、月光が少しざわめいたから。

「おかしな…周りの人間は誰も気がついて無いのに…」

その言葉に、彼が普段から人間に混じって生活しているのだと悟る。

「ま、いっか。そうそう、まだ名乗って無かったね。僕は綺水(キスイ)。」