腕が伝え来る、異なる体温。

(これは猫、これは猫、これは猫…)

必死に自身へ言い聞かせ、暗示をかける。

それに…ルシは自身をガリガリの坊主だと思っている…はず。

「さっ、寝ようぜツキヨ。お休み」

額に柔らかなモノを感じ、そこで自身の意識は途切れた。




「くくくっ。
美味しいツキヨ、たっぷり甘やかして、太らせたら、きっともっと旨くなるよな。」

今のままではガリガリ過ぎて、食べる所が少ない。

「しっかり睡眠、適度な運動("影"切り)、美味しい食事(はツキヨが用意するケド)…。」
そんな呟きを知らずに、静かに寝息を立てて眠るツキヨ。

今はまだガリガリだけど妙に抱き心地が良くて、良い香りのするツキヨ。

俺は、男だろうが女だろうが美味しく食べてやるよ。

ツキヨに言った、"お前の側は居心地よい"は本当。

でも、ツキヨの血の甘さを知ってしまったから。

だけど今は、我慢、ガマン。

「お休み、可愛いツキヨ」

ツキヨを抱きしめ直して、俺も睡魔へと身を委ねた。


眠り姫は呟きを聞かず朝を待つ…。

何も知らない無垢なる子供は、獣の腕の中、うっとりと微笑んだ。