月明かりと街灯が照らす道を歩く。

電柱と自身の影が時折交わり、奇妙な絵が道に描かれる。

たまに通る車が、自身を追い越し、排気ガスを撒き散らす。

(家に帰ったら、何を食べようか?)

自身しか帰らない、今は闇の中である、小さな家へと家路を辿る。

ふと、鼻に馴れた古臭いニオイ。

ハッと周りを見ると、先の電柱の陰に襤褸(ボロ)のように横たわった毛皮を見つける。

怪我をして動けないようだ。

警戒しながら近づく。

毛にこびり付いた、血の色。
どうやら、毛皮の主…猫のように見えた…だけの血では無いようだ。

自身の腕に抱えると、それは弱々しく、『にゃあ』と鳴く。

陰から連れ出すと、それは黒にとても近い、紫色の毛並みをしていた。

自身とは別の、猫特有の高い体温が、まだ生きている事を主張する。

放って置けずに家に連れ帰ったのが、正しい行為だったのかは、まだ自身にも解らない。