恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしには、伝えたい想いがある。


聞いてもらえないかもしれない。


例え、聞いてもらえたとしても、伝わらないのかもしれない。


それでも、かまわない。


だって、今、こも想いを伝えずに東京へ戻ったとしても、確実に、またひとつ後悔が増えるだけだ。


返事は期待しないでおこう。


伝えて、それから、帰ろう。


東京へ。


すっきり、さっぱり、この想いを伝えて、きれいさっぱり、終わらせて帰ろう。


3年前に、戻れなくてもいい。


だけど、中途半端にしたままの3年前に、終止符を打とう。


この、両手で。


この想いを伝えることで、きっと、雨は上がるんじゃないかと思う。


もう、苦しさと切なさが、降ったり止んだりの、時雨のようなこの恋を、終わらせよう。


終わらせよう、もう。


わたしは、ハンドバッグを幸に押し付けた。


「なっ……何やねん」


おどけた顔の幸が、ハンドバッグを受け止める。


わたしは、にっこり微笑んだ。


〈あずかって〉


「え。あんた、これ、持たずに行くんか」


ぎょっとする幸に、わたしは頷いた。


「何で? このバッグにはスマホもメモ帳も、必要なもんが入っとるやんか」


うん。


知ってるよ。


だけど、要らなくなったから。


もう、必要なくなったから。


〈必要ない〉


文字を打ち込めるスマホも、気持ちを書き込めるメモ帳とボールペンも。


もう、わたしには必要のない物たちだ。


そんな物があっても、今日のわたしには何の役にもたたない。