恋時雨~恋、ときどき、涙~

一度会っただけのおばあ様からの遺言と、タケハナ少年からのメッセージは、完璧すぎるほど、わたしの胸に響いた。


茫然とディスプレイを見つめるわたしの肩を叩いたのは、順也だった。


「ぼく、思うんだ。運命って、きっと、繋がっているものなんだって。そんな気がするんだ」


真央に出逢ったから、しーとも出逢えて、こうして、さっちゃんとも仲良くなれた。


ぼくが事故に遭ったこと。


一度は、しーと離れてしまったこと。


だけど、もう一度、こうして手を繋ぐ事ができたこと。


それから、結婚できたこと。


真央と健太さんが恋に落ちたこと。


真央のお母さんが病気になって、東京へ行くことになったこと。


それがきっかけで、真央と健太さんが同棲したこと。


でも、別れてしまったこと。


真央が東京へ行ったこと。


そして、連絡が途絶えたこと。


だけど、と一拍あって、順也が言った。


「また、真央と、再会できたこと」


順也が微笑む。


「いろんな、たくさんの条件がひとつずつ積み重なって、運命になって、繋がっている。そんな気がするんだ」


「私も、そう思う。今なら、そう思える」


わたしと順也の隙間に、さりげなく、静奈が入って来た。


「どっちにせよ、いずれはこうなる運命だったんだって、そう思う」


静奈が、わたしの手の中のメッセージカードを指さした。


「いいの? それ、健太さんからなんでしょ?」


わたしは、何も答える事ができなかった。


だけど、ぐらりぐらり、確実にわたしの心は揺らいでいた。


でも。


今更……。


だってもう、3年の月日が流れてしまったのだ。


〈今更……〉


言いかけたわたしの手を、静奈の細い手がそっと抑えた。


「返事を……真央の答えを、伝えに来たんじゃないの?」


静奈の真っ直ぐな瞳に、心臓が小さく飛び跳ねた。