恋時雨~恋、ときどき、涙~

たまたま、うちが女に生まれて、あらしが男に生まれた。


たまたま、恋に落ちた場所が、大阪っちゅう場所やった。


病気になったんが、うちやなくて、たまたま、あらしやった。


あらしを追っかけて来た土地が、たまたま、あんたらの生まれ育った町やった。


「なんや、ただの偶然かも分からんけどな。もし、ひとつでも条件が欠けとったら、うちらは今も出逢う事もなくて、別の場所で、また違う人生歩んどったはずや」


少しずつ、少しずつ、分かって来たような気がする。


ダイヤモンドダストを見るには、マイナス10度以下の気温である事、快晴で無風で、明け方である事、と条件が必要なように。


きっと、わたしたちの出逢いにも。


「せやからな」


と言いかけた幸に〈待って〉とジェスチャーして、わたしは両手を動かした。


〈例えば、たまたま、わたしの耳が聞こえなかったから〉


わたしたちは出逢う事ができた、そういうことなのだろうか。


〈もし、わたしの耳が普通に聞こえていたら〉


わたしは、みんなと出逢ってなどいなくて、別の友達と一緒に居たのかもしれない、そういうことなのだろうか。


〈そういうこと?〉


こく、と幸が頷いた。


「せや。わかっとるやん」


真央、と幸がやんわりとわたしの頭を弾いた。


不意に、泣きそうになった。


それなら、と思った。


ひとつでも、何かの偶然や条件が違っていたら。


耳の短いうさぎさんとよわむしのライオンさんが、出逢う事もなかったのだろうか。


「もうな、この際やから、はっきり言わせてもらうで。真央」


あんな、と幸がわたしの耳を指さした。


「たまたま、その耳が聞こえんかった」


真央、あんたはな、と幸がわたしの顔を指さした。


「あの男と出逢えたんやで、きっと。その、耳や。あの男と出逢うための、条件やったんちゃうかな」