恋時雨~恋、ときどき、涙~

「とにかく、めっちゃ低い気温でな、せや、確か、マイナスの10度以下や」


マイナス10度以下?


想像しただけで、背中がひんやりする。


「ほんでや。無風でな、空気が澄みきっとらなあかん。それと、快晴の明け方やないとあかん」


せやないと見れない珍しい風景なんやで、と幸が微笑んだ。


そうなのか。


そんなに、貴重な現象なのか。


ダイヤモンドダスト、って。


「いつでも、どこでも、誰にでも見れるもんちゃうねん。人と人との出逢いと別れに、似とるよな」


〈どういう意味?〉


わたしが聞くと、幸は半分嬉しそうに、半分切なそうに、笑った。


「それ。さっちゃんが言いたいこと、分かる気がするよ」


順也が言うと、


「うん。私も。今なら、分かる気がするなあ」


と静奈も相づちをうった。


〈どういう意味? わたしは、分からない〉


ダイヤモンドダストと、人の出逢いと別れに、一体どんな共通点があるというのだろう。


わたしにはさっぱり、見当もつかない。


首を傾げてむっとするわたしに、


「例えば、やで。条件や、条件」


と幸が続けた。


〈条件?〉


「せや。条件が揃わんかったら、ダイヤモンドダストは見れないやん。条件が揃ってなかったら、うちらも出逢っとらんし、今かて、こうして一緒におらんかったかもしれん、っちゅう事や」


条件……。


「今、うちらがこうして一緒に居るのも、条件がぴったんこに揃ったからやと思うんよ」


たまたま、生まれた年が同じだった。


真央と静奈とうちがたまたま女に生まれて、順也くんがたまたま男に生まれた。


真央と順也くんが、たまたま、お隣さん同士やった。


真央と順也くんが受験した高校を、たまたま、静奈も受験した。