恋時雨~恋、ときどき、涙~

だから、何のことだかさっぱり……。


困った顔を作ってみせると、順也はにっこり笑って「宝石」の手話をしたあと、芝生に転がったままのメモ帳とボールペンを拾うと、握りしめた。


そして、すらすらと何かを書き、メモ帳を差し出して来る。


【ダイヤモンドダスト】


はっとして、瞬時に顔を上げた。


わたしは、もうすっかり、失礼なことに綺麗さっぱり忘れていたというのに。


店長は、覚えてくれていたのだ。


やっぱり、店長は透明な心を持った、不器用なひとだなと思った。


〈待って〉


わたしは、順也が電話を切ってしまう前に、慌てて聞いた。


〈おばあさまは、元気にしていますか?〉


聞いて、お願い、と順也に頼み込む。


それを店長に伝えた順也が、にっこり微笑んだ。


「元気だって。今日は特別、顔色がいいって」


〈そう〉


良かった。


ほっと胸を撫で下ろした時、順也は電話を切ったようだった。


「真央が働いていた、キッチン・タケハナはどんなお店だったの? タケハナさんは、どんな人だったの? 教えて。あとで、ゆっくり」


穏やかな手話をする順也に、わたしはこくりと頷いて微笑んだ。


間もなく、スマホに動画が届いた。


「あっ、押さないでよ、しー」


「いいじゃない。私も見てみたいの、ダイヤモンドダスト!」


〈わたしの携帯なのに!〉


わたしたちは3人身を寄せ合って、ぎゅうぎゅう押し合って、添付されていた動画を再生した。


わ……あ……。


わたしたちは、吸い込まれるように、ディスプレイに釘付けになった。